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そして千年の恋がはじまる…(蒼の軌跡)

管理人:菜蒼の日々。

ソオダ水に浸した蛍石を洋燈に詰めて燈台へと急ぐ。
彼女の名はSchelle.E.lys.ion。 楽園の時守人。
昼は鐘で、夜は燈台で、
月と陽を操り『時』を紡ぐ。

「エリュシオン、こんな夜更けに燈台へ?」
呼び止められて振り向くと、一等星のカケラを抱えた少年が一人。
「えぇ、月が明るすぎて眠れないと、時告鳥から泣き付かれましたの。
今夜の月は何だか気分が高揚しているらしくて…。
もう少し落ち着いて頂ける様、今からお願いに伺うのですわ。」
「落ち着けだって!?」
少年の声の大きさに、星のカケラが『カロン』と音をたてた。
「落ち着けだなんて、今の月に云っても聞く耳を持たないだろうなぁ。
なにしろ壊れていたラヂオが漸く直ったんだから。」
「まぁ! ラヂオが?」
エリュシオンが驚くのも無理はなく。
ソラに浮かぶ月は、大概の時を独りで過ごしている。
時たま星たちの噂話につき合ったり、楽園の住人とチェスを楽しむ以外は。
そんな月が、太陽から贈られたラヂオを殊更気に入っていた事や
そのお気に入りラヂオのアンテナが、
生まれたばかりで飛行のままならない星に追突され『ぽきり』と折れてしまい、
砂の流れる音しか拾わなくなってしまったという事は、
楽園の住人ならば誰でもが知っていた。

「あの方のラヂオが直ったのは喜ばしい事だけれど、
こうも明るいと時告鳥の眠りに差し支えますわ。
彼らが鳴かなければ、太陽を呼ぶことも出来ませんもの。」
『ことり』と首を傾げたエリュシオンに、少年はすまなそうに付け加えた。
「僕が、直したんだけどね。」
『カロン・からん』と揺らめき光を放つカケラを
持て余し気味にしながら続ける。
「今夜のチェスで月が勝ったら、直すって約束をしていたんだ。
君を困らせてしまうなら、負けなけりゃよかったな。」
月が、寂しそうだったから。 と呟く少年に笑みを返し、
「でも、あのラヂオを直せるだなんて。
皆はとうに諦めてましたのに。 ありがとう。
今夜は月と一緒にラヂオを聞いてみますわ。
そしたら月も、少しは落ち着いてくれるでしょう。」

おやすみなさい、良い夢を。
互いに宵の挨拶を交わし、石畳の路地を別れる。



千とひとつの夜を越え、今宵も月はラヂオとチェスを楽しみながら
いつの日か太陽と一緒にソラに浮かぶ事を夢見ている…。



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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

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