そして千年の恋がはじまる…(蒼の軌跡)

管理人:菜蒼の日々。

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てのひら の 蝶

蝶を、つかまえた。
僕は、蝶になった。


意識が浮上したら、辺りは墨で塗りつぶしたやうな暗闇だった。
今の今まで眠っていたものか、
それともたった今、眸を開いたのか。
それさえも判然とせぬ。

 ひらり。

身を横たえたままの己の視界の片隅を、よぎる。

                       ひらり。

あげは蝶だらうか。
蝶の名なぞよく知らぬが、
一等美しいのは、あげは蝶だと聞いた。
あの蝶は、僕が今まで見たどの蝶より美しく思える。
故に、あれは、あげは蝶なのだ。

一頭だけではないやうだ。
身体を起こしてぐるりを見廻せば、
ひらり、ひらり。
彼方此方に舞っている。

彼方の蝶も、此方の蝶も。
どことなく人恋しげに舞ひ狂って。

きんぎんすなご。

鮮やかな燐粉は、羽ばたきの度に闇の中へ。
涙のやうに吸い込まれてゆく。

  嗚呼。これは。

これは。 この蝶どもは。


溢れる泪が、闇の深淵へといざなう。

僕にも、覚悟が出来たやうだ。
悟りを、覚えたのだ。

最前から僕の廻りを踊る一頭の蝶を。
両のてのひらに篭めた。
合わせ目へ、恋しい人の名を囁く。

会ひたい 会ひたい 会ひたい

ただその一念を、蝶に囁きかける。

蝶が、てのひらをすり抜けて。
闇を纏いながらも飛び立ってゆく。
泪ばかりを零し煌かせ。

あの蝶は、僕になった。
僕は、あの蝶になった。


さァ、ゆこう。
僕は覚悟が出来た。
その証に、手の甲には一頭の。




蝶を、つかまえた。

僕は。

僕は。




05年08月26日作成。

本当は、掌ではなくて、手の甲なのですが。
語感的に『てのひら』をチョイスしてみました。

人は、亡くなると蝶に姿をかえて皆の前に現れるそうです。

彼も、蝶になって現れてくれるようです。
そして、向こう岸へ行く覚悟を決めたのです。
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テーマ:詩・唄・詞 - ジャンル:小説・文学

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