そして千年の恋がはじまる…(蒼の軌跡)

管理人:菜蒼の日々。

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雨と煙草と野良猫と

窓を打つ雨音に紛れて幽かに聞こえた、声。
咥え煙草のままでテラスへ出れば、
紅い眸の猫が、尖った耳の先から雫を滴らせながら佇んでいた。
此方が出てくるのを待ち構えていたのだろうか。
踵を返して室内へ戻り、窓枠に凭れて
「…入れば?」
そのつもりなんだろう、と促せば漸く歩を進めてくる。

にゃぁ。

濡れた躯で部屋へ上がるのを躊躇うなんて。
人間じゃあるまいし。
そのうえ全身を震わせて雫を払うでもなく、大人しく座り込む。
借りてきた猫とは聞くけれど、遠慮深い野良なんて気味が悪いだけだ。
首の後ろを掴んで持ち上げれば、細い四肢がダラリと伸びる。
「まだ火をつけたばかりなんだけどさ」
灰を落とされるのは、オマエも嫌だろう?
バスルームに猫を放り込んでから煙草をもみ消した。


紫煙の向こうに、紅い眸が揺れる。
シャンプーかボディソープか。
どちらを使うか悩んで、結局ボディソープで洗ってみた。
どうせ猫用で無い事には変わりない。
水を嫌って暴れるかと思えば、こちらのする事には一切抵抗しなかった。
ドライヤーさえ唸り声ひとつ無い。
「…変なヤツ。」
ぷかり 浮かぶ煙を眺めた紅眼は、くるりと回って。

足音もたてずに近寄ってきて、此方の匂いを頻りに嗅いでいる。
「何?」
グルグル喉を鳴らして、頭を摺り寄せる。
どうやら、『同じ匂い』である事に安心したみたいだ。
…当たり前だろ、同じので洗ってやったんだから。


珈琲を淹れるついでに、ミルクの残りを与えてみた。
…また遠慮しているのか?
「飲ませたくなければ、やらないよ。」
それとも何?
コペンハーゲンよりドルトンの皿が良かったって?
それはご愁傷様。

にゃぁぁぅ。

ソレ、否定とも肯定とも取れるんだけどね?
「どっちでもいいから、飲めよ。」


窓の外は雨。
相変わらず途切れる素振りも無い。
昨日も今日も、明日も雨。
変わり映えの無い日々に、紅い紙魚ひとつ。(ふたつ?)
一皿のミルクでご満悦らしい。
ひと通りの毛づくろいを済ませると、膝の上に飛び乗ってきた。
指先の煙草が揺れ動くのが気になるのか。
躯を伏せてじっと見つめているから、次の瞬間には飛び掛ってくるだろう。
そう予測して尚、小刻みに指を動かして煙を散らしてみた。
刹那。

ぺろり。
にゃあぉう。

指先を舐められ、一瞬反応が遅れた。

ぺろり。

此方を見上げながら。

ぺろり。


紅く赤い眸が、此方を捉える。
薄桃色の舌はザラついていて…。
白い小さな牙が、見え隠れする。


捉えたのは、自分。
捉えられたのは……。




05年09月20日作成。

これまた管理人の人形ネタ。
某所へお邪魔した際、其処の人形が煙草を手にしていて。
それがとてもアンニュイな雰囲気で素敵だったのです。
そのアンニュイな彼に、管理人所有の人形を猫に仕立てて
絡めて仕舞いました。で、こんな小話完成。
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テーマ:詩・唄・詞 - ジャンル:小説・文学

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