そして千年の恋がはじまる…(蒼の軌跡)

管理人:菜蒼の日々。

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Please be my Valentine !

まだ厳しい寒さが続くこの街に、甘い香りが立ち込める2月。
物珍しくもない菓子が普段にも増して愛らしく包装され
其処彼処の店先で華やかさを競っている。
この季節の人肌恋しさも手伝ってか、
その甘やかな雰囲気に便乗する輩も数多い。

常ならばそんな雰囲気とは縁遠い筈の場所にも
浮き足立った人間が何故か一人…。


「常日頃から考えていた事だが、こういったイベント時には
その人間本来の魅力が問われると思わないか、中尉?」

朝から上機嫌な上司ではあったが、
午後になって更に拍車がかかった。
その理由は彼の執務机足元にある段ボール箱だ。

「…本当に魅力を感じた方にのみ、
差し上げている訳ではないと思われますが。」

果たして義理と本命とが存在する事を、
この呑気な男は知っているのだろうか。
軽い溜息を零しつつも、箱から溢れ床に落ちた幾つかを
リザは拾い上げる。

「全員が本気という事ではないでしょうが、
くれぐれも粗雑には扱わないで下さいね。」
「…随分な云い様だな…。 
私が一体何人の女性隊員から貰ったのか、気にはならないのか?」
「私が気にすべきは、大佐が幾つ頂いたかという事よりも
今日中に終えなければならない仕事の進捗状況かと。」

書類の雪崩に巻き込まれないよう段ボール箱に入れておきます、と
先程拾い上げた包みを、山と詰まれた小箱の天辺に丁寧に乗せ
ぐうの音も出ない上司に向かって畳み掛ける。

「さぁ、さっさと取り掛かって下さい。
因みに左手側に積んであるものは本日が期限ですから
決裁を至急お願い致します。
それでは私は事務局に行って参りますが、
何か飲み物でもお持ちしますか?」

書類の山々を前に既にぐったりとなった上司を一応は気遣ってみた。

「あぁ…そうだな。 熱いのを一杯貰おうか。」
「解りました。 では後程。」


事務局から戻る途中で給湯室に立ち寄り、
眠気覚ましに特濃珈琲でもと考えていたら
出てきた女性隊員と危うくぶつかりそうになった。

「あッ! す、すみません、ホークアイ中尉!!」
「あぁ、シェスカさん。 私は大丈夫、それより貴女の飲み物は平気?」
「はいッ大丈夫です! …ってあの、中尉?」

シェスカの手に握られたカップの中をまじまじと見つめるリザに
怪訝そうな目が向けられてくる。

「貴女のその飲み物……まだ在庫はあるかしら?
もし良ければ少し分けてもらえる?」
「まだ沢山あります! どうぞお好きなだけ使って下さい!
…でも中尉もこういったの飲まれるんですね、なんだか少し意外です。」

自分が飲む訳ではないのだと言い訳するのも逆に変な気がして、
偶にはなどという形で言葉尻を濁す。
シェスカに礼を云うとトレイにカップを乗せて執務室へと向かった。


「只今戻りました。
カップは此方に置きますので。」
「あぁ。」

机の端に湯気の立つそれを置いて早々に退室の意を告げる。

「大佐、誠に申し訳ありませんが本日は…」

早く。 早く。
カップの中味を気取られるより前に、
彼の前から立ち去らねば意味が無い。

「そうだな、偶には定刻に帰らせないと
人事局あたりから苦情を云われそうだ。
今日はもう帰って構わないぞ。」
「有難う御座います。」

踵を鳴らして敬礼、ドアへ急ぐ。
ドアノブに手をかけた瞬間。

「リザ」

ファーストネームを、呼ばれた。

ファミリーネームでも階級でもなく呼ばれたそれは
いくら執務室に二人きりだとて職場で口にするべきではない。
だから思わず振り返ってしまったのは彼の所為なのだと…
思う事にする。

「何か?」

動揺を押し隠して問えば、
書類の山並みからカップが高く掲げられて。
ゆらりと動かした為だろうか室内に香りが散る。
その甘く濃厚な匂いは明らかに珈琲とは異なるものであった。

「この案件についての決裁は、来月が締め切りだったかな?」

楽しみに待っていたまえ、と。
それはそれは嬉しそうに云う上司の顔は
きっと途方もなくニヤけきっているだろう。
そして自分はと云えば……。
互いの顔が見えない程に積まれている書類に感謝の念を禁じえない。
この時ばかりは彼の怠惰さを有り難く思ったリザだった…。




06年01月09日作成。

知人の鋼SSを読んで、無性に書きたくなったので。
初のロイアイです(笑)。
フライングしすぎ&ベタなネタでスミマセン…。
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